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2012年5月26日 (土)

自治体が「タカリ」ほう助にならないように

 今回の記事は当サイト所定条件無断転載など可能とします。

 今回の記事タイトルについて。当初、当サイト管理人である私自身、かなり乱暴な言い方であり、是非については慎重に検討した面もあります。

 しかし、ひいては、不当な義務を負わされる可能性のみにとどまらず、犯罪被害者の権利でさえ破壊する要素があると考えられ、あえてこのような言い方をしました。ご理解願います。

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 お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さん(37)の母親が最近まで生活保護を受給していたことを東京都内で開かれた記者会見で認め、一部を返還する考えを明らかにしたという。
 本来、生活保護より優先する形で河本さんが母親を扶養するべきところであり、それが可能な収入があったにもかかわらず生活保護を受けていたことで問題になったというもの。

 なお、河本さんも一部とはいえ援助はしていたようだ。

 そして小宮山洋子厚生労働相はこの問題に絡み、生活保護受給者の親族が受給者を扶養できない場合、親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す生活保護法改正を検討する考えを示したという。

 生活保護についてきちんと考えておかないと、これをお読みの皆様も、背負わなくてもいい義務や負担を負わされるかもしれない。また、正当な権利が守れなくなるかもしれない
 …などといろいろ思いをめぐらせつつ、今回の記事を書いていく。

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 ・ 扶養義務と生活保護

 現在の法律、判例などからすると生活保護についてはこのような感じといったところか。扶養については民法の第877条~881条で定められている。

 1. 民法では直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があることを定めている。
 さらに家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間(曽祖父母、おじ、おば、おい、めい、ひい孫まで含む)においても扶養の義務を負わせることができるともしている。

 2. 但し当事者の生活の範囲内とされ、必要に応じて家庭裁判所が扶養の程度と方法を決める。このとき、親族の経済事情以外にも考慮すべき点があれば反映される。

 3. 実の親であっても生き別れなどの理由で養育を受けられなかった場合、義務を負わされる可能性は、度合いに応じて低くなる
 余談だが実の親であっても度を越したことをしでかせば、子が裁判に訴えて裁判所が親にそれ相応の命令を出すことさえあるという。

 4. 生活保護法の規定によると、扶養は生活保護に優先しておこなわれるとされるが、生活保護が緊急に必要な人の保護を妨げる規定ではない

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 小宮山厚労相は、明らかに扶養可能と思われる場合は、家庭裁判所への調停手続きを積極活用すること、生活保護費の支給水準引き下げを検討すること、生活保護の受給開始後、親族が扶養可能と判明した場合は積極的に返還を求める意向があることを示した。

 そして、生活保護受給者の親族が受給者を扶養できない場合、親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す生活保護法改正を検討する考えも示したという。

 ・ 「タカられる」ことにはならないのか?

 どのように証明する義務を負わせるのであろうか。やはり裁判所の決定を文書化して提出、ということになるのであろうか。
 先ほど述べたとおり、扶養義務はお金だけの問題だけではない。必要に応じて裁判所がいくつかの事情を考慮し扶養の程度と方法を決める

 義務の追わせ方ひとつ間違えると、親族に過剰な負担を強いることにもなりかねない。極端な言い方だが、社会通念上身内とするのに心理的抵抗を感じてもおかしくない状況でも、いきなり福祉関係者が現れて血縁関係を強調し、過剰負担を負わせることになれば問題である。

 冒頭で「犯罪被害者の権利でさえ破壊する要素」という言葉を使ったが、不当な仕打ちを与えた親族の面倒まで「カネがあるんだから面倒見ろ」なんてことになったら……
 これをお読みの方々の中にも「家族は大丈夫だが親族の中にはヤバイのがいる」ということがあるかもしれない。
 ましてや犯罪またはそれに等しい仕打ちを受けた被害者に加害者を養う義務を負わせるなどもってのほかと言えよう

 実際、ごく一部とはいえ私の親族の中にも「俺のサイフはお前たちのためにあるわけではない」と言いたくなる輩もいる。
 その親族は、本来ならばもっとキツイ言い方をされても文句の言えない言動を私や私の家族にしてきた。
 ただ、公の場での発言であることを意識してあえて控えめな言い方にとどめておく。

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 ・ 本当に必要な人だっているんですよ…

 不正受給について批判したり、対策を取ろうとするのは良い。しかし、それならば、次のことを考えるべきではないか。
 最後にまとめとして書いておく。

 (1) 支給額はその時点での最低限度の生活を考慮して決めるべき。不正受給があったから減らす、というのはいかがなものか。
  「最低賃金より生活保護が高いから働かない人が出てくる」と言う説にについて。働くことで収入が減少し、生活が不安になることを心配してそうなった可能性も考慮すべき。
 生活保護の問題だけではなく、労働者の生活向上からも最低賃金の引き上げを検討したほうが良い

 (2) 不正受給が過大に報道されたため生活保護受給者全般が敵視され、本当に必要な人が受けられなくなる社会にならないよう注意すべきでは。
 政治に関わる人たちならばマスコミ報道のあり方などについて最低限度の思考はできると思われる
 これについては報道関係者も十分注意すべきと思われるが。実際、BPO(放送倫理・番組向上機構)にもそういった意見が送られている。

 (3) そもそも現行法でも裁判所を有効活用すれば正当な扶養義務を負わせることは可能。不正受給防止のためとはいえ、法律を変えることについては冷静に考えることが必要なのではないだろうか。
 不正受給が減少したとしても、血縁関係をタテにとり不当に親族に何らかの要求する事態が増加すれば何の解決にもならない。また血縁関係があるというだけで、その他の事情を考慮せず行政関係者が結果的に不当を要求をしてしまうような事態は避けなければならない。
 

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 <参考資料>

 Yahoo!ニュース : <生活保護費>親族負担どこまで http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120525-00000133-mai-soci 毎日新聞 5月25日(金)23時2分配信

 Yahoo!ニュース : 親族の扶養義務、運用厳格化へ…河本さん謝罪 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120526-00000004-yom-soci 読売新聞 5月26日(土)9時10分配信

 Yahoo!ニュース : 生活保護受給 扶養困難、証明義務づけ 厚労相、支給水準下げも検討 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120526-00000089-san-soci 産経新聞 5月26日(土)7時55分配信

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